「あなたの看護観はなんですか?」
多くの看護師が面接や研修のときに聞かれた経験があるでしょう。
「私の看護観」をテーマにしてレポートにする課題もありますよね。
「看護観って何?」
「看護観なんて難しいもの持ってないよ…」
15年働いた私も自信を持って言えません!
…が、そんなに難しく考えなくてもいいことに気づきました。
頭を悩ませる「看護観」についてお話していきます。
皆さんの参考になれば幸いです。
看護観とは何か
そもそも「看護観」とは何か。
文献やホームページを調べていくと、共通した定義はなく、それぞれの媒体での表現がされていました。
よくあるのが
「看護師として何を大切にしているか」
「なりたい理想の看護師像は何か」
「看護師として患者にどのような看護を行うか」
などなど。
ふわっとしているから、いざ「あなたの看護観は?」と聞かれるととまどってしまうのです。
看護師15年の経験を経て、自分の看護観を振り返ってみました。
看護師として持つ軸のようなもの
看護師として働いていると、つまづく場面に何度もあたります。
「本当にこれであっているの?」
「他のスタッフはああ言っているけど、私は違うように思う…」
「患者さんをこのままにしていいのだろうか…」
きっとみなさんも悩むことがたくさんあるでしょう。
そんな時に自分のもつ「看護観」を基準にするのです。
「看護師として何を大切にしているか」
自分の中に1本軸があるイメージです。
「軸=看護師として大切にしていること」です。
仕事をしていて、決断に迷う時は自分に問います。
「看護師として私は何を大切にしているんだろう…?」
自分の持つ軸から大きくズレていないかを見つめなおすのです。
もし患者さんに寄り添うことを大切にしていたら、患者さんの側にいたり、思いを傾聴したり、患者さんのことを知ろうとするでしょう。
忙しいからと言ってずっと患者さんの所に行かないのが辛い(=軸からズレている)ので時間を作りたいと思うでしょう。
患者さんの思いを尊重することを大切にしていれば、医師の治療方針と患者さんの意思が異なり、患者さんの望んでいない治療方針になったとき(=軸からズレている)、医師やコメディカルに働きかけたり、必要ならば大きなカンファレンスも開催しようとするかもしれません。
他にも「家族も大切にできる看護師でありたい」、「患者さんとの信頼関係を大切にしたい」、「状況に合わせて臨機応変に対応できることを大切にしたい」などなど…。
看護師それぞれに1本の軸があるはず。
看護師としての「軸=看護師として大切にしていること」が看護観になるんです。
看護師によって看護観は違う
「看護観」はひとりひとりの看護師によって違うものです。
年齢や経験年数、経験してきた職場、いっしょに働いてきた同僚、関わってきた患者さん…、まったく同じ経験をした看護師はいません。
さらに看護師としてではなく、ひとりの人間として生きてきた環境や経験も違います。
「看護観」は自分の経験や価値観などから作り出されます。
学生時代に関わった患者さんとのやりとり、先輩から指導してもらったこと、大変だったけどやりがいがあったこと…。
成功したことや苦労したこと、学んだことをもとにして「看護観」ができあがるのです。
まったく同じ「看護観」なんて存在しないのです。
あなただけの「看護観」を見つけ出してください。
あなただけの「軸=看護師として大切にしていること」があれば、困ったとき悩んだ時に判断する材料になりますよ。
看護観はどんどん変わるもの
「看護観」はどんどん変わっていきます。
「看護観」は「軸」のようなものだと言いました。
「軸」と聞くと1本の身動きしない柱のようなイメージかもしれませんが、変化にも対応できる、しなやかな「軸」であってほしいのです。
初めて看護を学びだした学生時代
新人看護師として働きだしたころ
経験を積んで一人前になって、プライベートでも結婚したり出産したり…。
部署異動も経験しているかもしれません。
いろんな経験をして、色んな患者さん、ご家族と関わって、同僚から刺激を受けたりします。
その時々で得たもの、気づいたものを取り込んで「看護観」は変わっていきます。
変化することで、前に持っていた「看護観」を否定するかもしれません。
きっとあなたが成長したのでしょう。
あなたの「看護観=軸」はしなやかに変化をとげて、深めてられていくものなんです。
看護観はだれが持ってもいいし、なんだっていい
「看護観」って難しい…と思いがちです。
非常に主観的、つまり自分の中にあるもの、形や答えのないものです。
だから誰かが否定できないものなんですよね。
学生さんだって、新人さんだって、経験を積んだ看護師だって、自分なりの「看護観=大切にしていること」があるはず。
看護を学んだり実践していれば、年齢も経歴も関係なく自分だけの「看護観」をもっていていいんです。
「レポートにまとめるように」とか「発表をしろ」と言われて、堅苦しい環境の中ではうまく伝えられなくて、難しく思ってしまうんですよね。
自分だけの「看護観」があって何が正解なんてないんです。
毎日が忙しいかもしれませんが、何か気づきや感じたことを、簡単にメモしておくと「看護観」が深まりやすいです。
頭の中で考えてもぐちゃぐちゃになってくるでしょう。
「書く」ことで頭の中から自分の考えを引っ張り出し、目で見てみてください。
そうすると、次第に自分の考えがまとまってきますよ。
騙されたと思ってやってみてください。
ただメモするのもおススメですし、マインドマップもおススメです。
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子育てママが勉強する良い効果をマインドマップで考えた
続きを見る
ママ向けに書いた記事ですが、マインドマップについて書いてありますよ。
バーッて書いてみると自分の頭の中から色んな考えがどんどん出てきます。
あなただけの「看護観」が見えてくる助けになってくれるはずです。
【2月18日追記】看護観についてもう少し考えることがありましたのでまとめてみました。
参考記事:看護観って結局は自分の意見をもつこと。ちきりんさんの「自分の意見で生きていこう」を読んで
私の看護観
私はとある愛知県内の急性期病院で、混合病棟ばかりを渡り歩いてきました。
産婦人科以外は件数は少ないながらも関わったことがあり、これといった得意分野もありません。
15年間看護師として働いた私の「看護観」を恥ずかしながらご紹介します。
こんな看護師もいるよ~と何かの参考になると嬉しいです
看護学生時代
県内の看護大学に通っていました。
学生時代に看護というものに触れ、本当に今思うと何もわかっていませんでした。
看護ってなにすればいいの?何を勉強すればいいの?
完全に迷子でした。
そんな私の「看護観?」は…
なにそれおいしいの?
なに考えて実習に行ってたんだろう…?
基礎実習などを終えて、初めての専門の実習が急性期であったこともありコテンパンにされました。
トラウマレベルにボコボコにされたので、その後の実習はとにかくなんとか生きて実習を乗り越えることに重きを置きすぎて「看護観」に行きついていなかったのかも…。
しいていえば
4年生の最後の方の実習で患者さんの「個別性」がほんのちょっとわかるようになり、患者さんに合わせて看護することって大切なんだな…くらいの「看護観」はあった…のかもしれません。
いや、ちょっと恥ずかしすぎる…。
学生ですもんね(;'∀')
新人~3年目くらいのころ
晴れて国家試験に受かり、無事に看護師として働き始めたころ。
とにもかくにも、仕事を覚えるのに必死。
学生時代の看護と実際に働いてみるのでは天と地の差でしたね。
とにかくその日にやらなきゃいけないこと、落としちゃいけないことを必死にこなす毎日なので、とにかく事故をおこさないことが大切なことでした。
1年くらいたつと「看護観」についてレポート提出とか研修で発表とかありますよね。
私のときも漏れずにありましたね…。
その時の私が発表したのは「患者さんが笑顔でいられるに関わること」
患者さんと関わっていて、患者さんが笑顔でいてくれることがとても嬉しかったんです。
すごく単純なことですが、「笑顔=いいこと」と考えていましたね。
でもそんなに単純なことではないんですよね…。
中堅看護師と呼ばれるようになってから
看護師として働いて、3年くらいになると一人前、5,6年目くらいになると中堅看護師と言われるようになります。
一人前と言われるようになってから(本人はまだまだ不安よ…)、だんだんと見えてくるものが増えてきます。
患者さんの気持ちや人生のこと、仕事や家族との関係、もっと深く患者さんのことが見えるようになる。
看護に深みが出てくるんですね、ただ病気を治して退院させるだけでは看護ではない。
患者さんが心から笑うためにどうしたらいいの?
病気を治すだけでは解決しないこともある。
治らない病気の人だっているじゃない。
患者さんひとりひとりをもっと見つめていこう、もっと深く知るようにしよう。
「患者さんが心から笑うようになるために、患者さんひとりひとりに合わせた看護をする」
ちょっとカッコよくなってきましたかね?
患者さんの心から笑えるようになるのって、どんなときなの…?悩みました。
「おこがましいことなんじゃないか」、「自己満足になるだけじゃないの?」とも思っていました。
経験年数とともに増える仕事に忙殺されたり、出産、育休、子育てとの両立の壁にぶち当たり、ただひたすらに毎日を過ごすようにもなっていました。
看護師15年目の看護観
現在なんのめぐりあわせか病棟を離れて「地域包括支援センター」というところで働いています。
最後の病棟での1年間はひたすらに看護倫理を学ぶ1年間でした。
研修ということもあったのですが、超絶苦手な倫理問題にぶち当たり、めちゃくちゃ苦しんだのは結果として私を成長させてくれました。
「患者さんと向き合うということ」
思い出させてくれたんです。
増え続ける業務、業務をギリギリの人数でこなし、患者さんと関わる時間をゆっくり取れない状況。
独身で子どものいない頃は残業することもできたのですが、娘のお迎えもありほとんどできずに走って帰る毎日。
看護というよりは業務をこなすだけ。
15年も経つと成長を感じなくなり、このままずるずると働き続けるのかとも考えていました。
倫理的な問題のある患者さんを担当したとき、ひたすらに患者さんのところに通い、ご家族とも何度も何度もお話をしました。
患者さんの持っている価値観や、人生で起きたこと、その人の人となりが見えてくるんです。
○○病の患者さん、○○手術をした患者さんではなく、その人個人と向き合えるようになりました。
思いっきり患者さんと向き合った経験から、私の看護観は変わりました。
「患者さんひとりひとりを理解し、考えや価値観に沿って患者さんと一緒に進めていける看護をする」
ずいぶん立派になりましたよね(笑)
業務に追われ本当にできているかは怪しいですが、できる限り患者さんと向き合って、話し合って、いっしょに治療や療養生活を考えて進めていける看護をしたいなあと思っています。
そんななかの地域包括支援センターへの移動。
病院ではない在宅までいってのアプローチをしています。
めちゃくちゃひとりひとりを深掘りして関わっています。
なんの巡りあわせなのかはわかりませんが、この経験はまた私の看護師としての成長になり、「看護観」を深めるきっかけになってくれると思っています。
そうなるようにがんばります!
まとめ
自分語りが長くなってしまいましたが…(;'∀')。
「看護観って難しい…」と思ってしまいがちですし、非常に忙しい中ゆっくりと考えられないと思います。
患者さんとのやり取りをしている中で、なにか気づきや学びが合ったとき、簡単にメモを書いたり、マインドマップにしてみてください。
めちゃくちゃ簡単でいいんです。
いつか「あなたの看護観は…?」と聞かれた時に役立つはず。
そしてあなただけの「看護師としての大切なこと」を大切にしていってください。
「看護して大切なこと=軸」、あなたの中にある看護師としての軸です。
看護師として働いていると、軸は何度も揺さぶられたり、ズレたりするときがあります。
ただそのときに、しなやかに強い軸をもって、自分に問いかけながら進めていってみてください。
きっとあなたを助けてくれますから。
いっしょにがんばっていきましょうね。
ここまで読んでくださってありがとうございました!
まとめ
「看護観」とは何か
- 「看護師として大切にしていること」=軸のようなもの
- 看護師によって違うもの
- どんどん変わるもの
間違いも答えもありません
経験や気づきによって深まっていきます
かっこつけたりすることもありません
あなただけの「看護観」を深めていってくださいね
「看護観」をテーマにしたレポートも多いのでご参考に。
研修レポートについてなので、参考になるか微妙かもですが。
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看護師の研修レポートは大変ですよね…15年間働いたママナースの書き方&心構えのアドバイス
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